個人再生の返済額は、借金額だけで一律に決まるものではありません。法律上の最低弁済額を出発点に、財産を処分して返済に充てる場合の額である清算価値を確認します。
給与所得者等再生では、可処分所得額の2年分も比較対象です。結論として、返済総額の単純な目安は最低弁済額、月々の支払いの目安は返済総額を36回で割った金額で確認できます。
ただし、実際の返済総額は財産、住宅ローンの有無、利用する手続などで変わります。借金額だけから減額後の金額を断定せず、返済を継続できるかをあわせて確認しましょう。
個人再生の返済額は3つの基準を比べて考える

個人再生では、再生計画が認可され、計画どおりに返済すると、残りの債務について免除を受けられる仕組みです。裁判所は、再生計画の内容について、原則3年間で債務の一定割合を分割返済するものと案内しています。
返済総額を検討するときは、次の基準を混同しないことが大切です。小規模個人再生では主に最低弁済額と清算価値を比べ、給与所得者等再生では可処分所得額の2年分も加えて検討します。
- 法律上の最低弁済額
- 清算価値
- 給与所得者等再生における可処分所得額の2年分
以下では、それぞれの基準と、月々の返済額を確認する方法を順に解説します。
最低弁済額は債務額に応じた法定の基準
最低弁済額は、個人再生で再生計画に定める返済額の土台となる基準です。債務額が100万円以下の場合はその額、100万円を超え500万円以下の場合は100万円が基準になります。
債務額が500万円を超える場合は、原則として5分の1、300万円、10分の1という区分で計算します。ただし、最低弁済額だけで最終的な返済総額が決まるわけではありません。
清算価値が高い場合は返済総額が増えることがある
清算価値とは、自分の財産を処分して返済に充てる場合の額です。個人再生の再生計画では、返済総額が清算価値を上回る必要があります。
そのため、借金額から計算した最低弁済額が100万円でも、清算価値がそれを上回る場合、返済総額を100万円として計画できるとは限りません。預貯金、不動産、自動車、保険の解約返戻金などの扱いは個別事情によるため、概算表だけで結論を出さないことが必要です。
給与所得者等再生では可処分所得額の2年分も比較する
給与所得者等再生は、継続的な収入が見込まれる人のうち、給与所得者など将来の収入を確実かつ容易に把握できる人が利用できる手続です。この手続では、返済総額が可処分所得額の2年分以上であることも必要になります。
可処分所得額は、単純な手取り月収や家計上の余りを24か月分にした金額ではありません。手取収入額から生活に必要な費用を控除し、政令に従って計算される額であるため、自己判断で計算を置き換えず、申立先の裁判所や専門家に確認しましょう。
個人再生の最低弁済額一覧
次の表は、民事再生法上の最低弁済額の区分を整理したものです。ここでの債務額は、個人再生で計算の対象となる債務額を前提にしています。
| 債務額の区分 | 最低弁済額の基準 |
|---|---|
| 100万円以下 | 債務額と同額 |
| 100万円超500万円以下 | 100万円 |
| 500万円超1,500万円以下 | 債務額の5分の1 |
| 1,500万円超3,000万円以下 | 300万円 |
| 3,000万円超5,000万円以下 | 債務額の10分の1 |
住宅ローンなどの扱いを含め、計算の対象となる債務額は単純な借入残高と一致しないことがあります。個人再生は、将来に継続的な収入を得る見込みがあり、無担保債務の総額が5,000万円以下である人が利用を検討できる手続です。
無担保債務の総額が5,000万円を超える場合は、上表を前提に個人再生の返済額を試算することはできません。
借金額別|個人再生後の返済総額と月々の支払いの単純試算
以下は、清算価値が最低弁済額を超えず、給与所得者等再生の可処分所得額の2年分も最低弁済額を超えないと仮定した単純試算です。返済期間は原則どおり36回とし、端数の調整、裁判所費用、専門家費用、住宅ローンは含めていません。
| 借金額の例 | 最低弁済額の単純試算 | 36回で割った月額の目安 |
|---|---|---|
| 100万円 | 100万円 | 約2万7,778円 |
| 300万円 | 100万円 | 約2万7,778円 |
| 500万円 | 100万円 | 約2万7,778円 |
| 600万円 | 120万円 | 約3万3,333円 |
| 1,000万円 | 200万円 | 約5万5,556円 |
| 1,500万円 | 300万円 | 約8万3,333円 |
| 2,000万円 | 300万円 | 約8万3,333円 |
| 3,000万円 | 300万円 | 約8万3,333円 |
| 4,000万円 | 400万円 | 約11万1,111円 |
| 5,000万円 | 500万円 | 約13万8,889円 |
たとえば借金600万円の場合、最低弁済額の基準だけで単純計算すると、返済総額は120万円、36回で割った月額は約3万3,333円です。清算価値が120万円を上回る場合や、給与所得者等再生で可処分所得額の2年分がより高い場合は、表より返済総額が増える可能性があります。
この表は、再生計画が認可されることや、表の金額まで債務が減ることを示すものではありません。債権額、財産、収入、支出をそろえ、返済を続けられるかを確認する最初の目安として利用してください。
個人再生を含む債務整理を検討しており、自分の借金額・家計・財産を踏まえた選択肢を整理したい場合は、法律事務所への相談を検討できます。
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個人再生の月々の返済額は返済総額と返済期間から確認する
月々の支払いは、返済総額を返済回数で割って概算します。個人再生の返済期間は原則3年間のため、まずは36回で割った金額を家計に当てはめて確認します。
原則3年で返す場合は「返済総額÷36回」
返済総額が100万円なら、100万円を36回で割ると月額は約2万7,778円です。返済総額が300万円なら、月額は約8万3,333円となります。
実際の再生計画では端数の調整などがあり、毎回の支払額が単純計算と完全に一致するとは限りません。住居費、食費、光熱費、通信費、税金・社会保険料、医療費などを差し引いた後も、支払いを継続できるか確認しましょう。
特別の事情がある場合は最長5年の返済期間も検討対象になる
原則3年での返済が難しい場合でも、事情によっては返済期間を最長5年まで延ばし、月々の負担を抑えることが検討される場合があります。返済総額が120万円なら、36回では月額約3万3,333円、60回で単純計算した場合は月額2万円です。
もっとも、5年で返せるかどうかや具体的な返済回数は、再生計画の内容や事情により判断されます。5年にすれば必ず利用できるとは考えず、収支資料を基に確認してください。
返済額を試算する前に確認したい3項目

個人再生の返済額を現実的に考えるには、借金の合計だけでなく、債務・財産・家計を同じ時点で整理します。情報が不足したままでは、最低弁済額を概算できても、清算価値や継続可能な月額を判断しにくくなります。
債権者ごとの残高と担保付き債務の有無
借入先ごとの残高、毎月の返済額、契約内容を一覧にまとめてください。住宅ローンを含む担保付き債務があるかも、返済計画を考えるうえで重要です。
請求書、利用明細、返済予定表などをできる範囲で集めておきましょう。借入先や債務額を一覧にすることで、確認すべき情報を整理しやすくなります。
預貯金や不動産などの財産状況
清算価値の確認のため、預貯金、不動産、自動車、保険などの状況を整理してください。何がどのように評価されるかは個別事情や申立先の運用にも関わります。
財産があるから利用できない、あるいは財産があっても最低弁済額だけでよい、と決めつけないことが重要です。
毎月の収入・生活費・突発的な支出
給与明細、家計簿、通帳などで、手取り収入と生活費を整理します。個人再生では返済額を算出するだけでなく、再生計画どおりの支払いを続けられる見込みも重要になるためです。
毎月の余りだけではなく、税金・社会保険料の支払い、更新費用、医療費などの不定期支出も確認しましょう。返済のために新たな借入れを重ねる状態であれば、月額の見通しを早めに見直す必要があります。
個人再生の返済額で見落としやすい注意点
住宅ローンがある場合は月々の負担を合算して考える
住宅ローンがある場合、個人再生の返済額だけで家計を判断することはできません。住宅資金貸付債権に関する特則を利用するかどうかを含め、住宅ローンの支払いと個人再生の返済を合わせて継続できるか確認する必要があります。
住宅を維持できるか、住宅ローンの条件をどのように扱うかは一律ではありません。住宅ローンがある人は、住宅費を含めた収支を整理したうえで、具体的な事情を専門家へ伝えましょう。
裁判所費用は返済原資とは別に確認する
裁判所は、個人再生の申立てに必要な費用として、収入印紙1万円分のほか、連絡用の郵便料と予納金を案内しています。郵便料や予納金は裁判所ごとに異なるため、申立先の裁判所で確認が必要です。
個人再生にかかる費用全体については、個人再生の費用はいくら?裁判所費用・弁護士費用と払えないときの確認点で詳しく整理しています。月々の返済額だけでなく、申立てに必要な費用も含めて準備できるか確認してください。
返済可能額から逆算し、法律相談と家計相談を並行する
個人再生を検討するときは、どこまで減るかだけではなく、返済を続けられるかから逆算することが重要です。最低弁済額の概算と、実際に家計から出せる月額に大きな差がある場合は、手続の選択も含めて見直しが必要です。
手続の可否や再生計画は法律の専門家へ相談する
個人再生を利用できるか、どの手続が状況に合うか、再生計画をどのように立てるかは、借金・財産・収入・住宅ローンの状況を踏まえて確認する必要があります。弁護士や司法書士への相談では、借入先一覧、残高、収入資料、支出の内訳、財産に関する資料を用意すると、事情を共有しやすくなります。
家計の立て直しは別の相談先も並行して利用できる
法律相談は手続や権利関係を整理するためのもの、家計相談は毎月の収支や生活再建を整理するためのものです。役割は異なるため、必要に応じて並行した相談も可能です。
たとえば、日本クレジットカウンセリング協会は、債務の返済・整理の方法に加え、家計・生活に関する相談も案内しています。また、費用面が心配で法律相談をためらっている場合は、収入・資産などの要件を満たすと法テラスの民事法律扶助制度を利用できる場合があります。
利用条件や対応範囲は各窓口で確認してください。債務整理全体の選び方は、債務整理はおすすめしない?しない方がいい人と後悔しないための判断基準を解説も参考になります。
返済が難しい状況であれば、借金がやばいと感じたらどうする?今すぐできる対処法とNG行動を解説もあわせて確認してください。
個人再生の返済額に関するよくある質問
個人再生をすると借金はいくら減りますか?
借金額だけから一律には決まりません。最低弁済額を基準にしつつ、清算価値がより高ければその影響を受け、給与所得者等再生では可処分所得額の2年分も比較対象になります。
そのため、借金が必ず何分の1になると断定することはできません。借入先ごとの債務額、財産、収入、住宅ローンの有無などを確認し、個別に返済総額を検討します。
個人再生の月々の支払いは何回ですか?
再生計画による返済は原則3年間です。毎月払いとして単純に考える場合は36回で返済総額を割り、月額を概算できます。
事情によっては返済期間を最長5年まで延ばせる場合もありますが、具体的な返済回数や各回の金額は再生計画の内容によります。返済期間を前提に生活設計を変える前に、個別の事情を伝えて確認しましょう。
個人再生で予定した返済額を払えないときはどうすればよいですか?
返済原資が不足しそうな場合は、追加借入れで穴埋めする前に、収支と債務の状況を整理してください。生活費を確保しても月額を継続できない場合は、個人再生の計画が状況に合うかを確認し直す必要があります。
法律の専門家には手続や返済計画について、家計相談の窓口には収支や生活再建について、それぞれ相談できます。資料をそろえたうえで、必要に応じて両方の相談先を利用しましょう。
参考にした公的機関・公式情報
基準日:2026年8月19日。個人再生の利用可否、返済総額、返済期間、費用は個別事情や申立先の裁判所により異なります。本文の試算表は、返済額や再生計画の認可を保証するものではありません。

