個人再生の返済額は、借金の額だけでは決まりません。小規模個人再生は「借金額による法定の下限」と「清算価値」を比べ、給与所得者等再生では「法律上の可処分所得の2年分」も加えて考えます。そのうえで、返済総額を支払回数に分けます。
例えば一般の借金が600万円でも、返済総額が必ず120万円になるわけではありません。清算価値が180万円なら、その基準も満たす計画にします。この記事では、比較する順序、36回払いの端数、住宅ローンや手続費用を含めた家計の見方を説明します。計算例はすべて仮定で、読者の申立結果や返済額を予測するものではありません。
試算するときの順序
- 借入先ごとの残高と、住宅ローン・担保・税金などの区分を書き出す。
- 手続に応じた返済総額の下限を、財産や収入の資料とともに算出する。
- 返済日ごとの額に分け、生活費やほかの支払を差し引いて続けられるかを調べる。
督促や裁判所の書類が届いている場合は、資料が全部そろうのを待たず、受取日と記載された期限を相談先へ伝えてください。
返済総額を決める3つの基準

借金の額から計算する法定の最低弁済額
次の表は、住宅ローン・担保付き債務・特別な性質の請求がなく、裁判所の手続で認められた一般の借金だけを考える場合の下限です。住宅ローンなどがある人は、法律上の計算対象を個別に分けるため、借入総額をそのまま表へ当てはめないでください。
| 対象となる借金の額 | 法定の下限 |
|---|---|
| 100万円以下 | 全額 |
| 100万円を超え500万円以下 | 100万円 |
| 500万円を超え1,500万円以下 | 対象額の5分の1 |
| 1,500万円を超え3,000万円以下 | 300万円 |
| 3,000万円を超え5,000万円以下 | 対象額の10分の1 |
個人再生には、将来も継続的または反復的に収入を得る見込みなどの利用条件があります。法定の債権総額の上限は5,000万円で、計算では住宅資金貸付債権、担保による回収見込額、手続開始前の罰金等を除きます。担保付き借金でも担保で賄えない部分はあるため、契約書と残高を専門家へ示します。計算対象が5,000万円を超える場合は、この表で個人再生後の額を求められません。
清算価値が高いと、返済総額の下限も上がる
清算価値は、破産した場合に財産から債権者へ配当される額に対応する基準です。個人再生の計画では、清算価値以上の支払も求められます。「財産を残すので、返済額とは関係がない」という扱いにはなりません。
預貯金、不動産、車、保険の解約返戻金、退職金の見込額などが検討対象になります。購入価格や通帳残高をただ合計するだけで確定するものではなく、担保や財産の種類、評価時点などの扱いを申立先に合わせて検討します。自分で低い金額を付けたり、家族名義へ移したりせず、残高証明・査定資料・保険会社の回答などを相談先へ見せてください。
給与所得者等再生は、可処分所得の2年分も比べる
給与などの定期的な収入があり、その変動幅が小さいと見込まれる人は、給与所得者等再生を検討できます。この手続では、先の2基準に加えて、法律上の可処分所得の2年分以上を支払うという基準があります。会社員であれば必ずこの手続を選ぶという意味ではありません。
可処分所得は、収入から税金・社会保険料と、法令に基づく最低生活費を引いて計算します。自分の家計簿で残った金額を24倍する計算とは異なります。法定の生活費は年齢、住む地域、扶養する人の数などに基づきます。収入の対象期間も、原則的な計算と、転職などで大きく変わった場合の計算とで異なります。
相談先には、源泉徴収票や給与明細、扶養家族、住まい、転職・休職の時期を伝え、使った収入の期間と生活費の基準が分かる計算書を見せてもらいましょう。
借金600万円でも、月5万円と6万円に分かれる仮定例
住宅ローンや特別な請求がない一般の借金600万円、清算価値180万円、法定の可処分所得が年108万円だったと仮定します。ほかの認可条件を満たすと仮定し、返済総額を比べた例です。
| 計算する基準・手続 | 計算と下限 |
|---|---|
| 借金額による基準 | 600万円 ÷ 5 = 120万円 |
| 清算価値 | 180万円(仮定) |
| 法定の可処分所得2年分 | 年108万円 × 2年 = 216万円 |
| 小規模個人再生の下限 | 120万円と180万円を比べ、180万円 |
| 給与所得者等再生の下限 | 120万円・180万円・216万円を比べ、216万円 |
| 36回の毎月払いなら | 180万円 ÷ 36回 = 月5万円 216万円 ÷ 36回 = 月6万円 |
この例では、借金額だけで求めた120万円を返済総額にできません。さらに、下限を満たしていても、最後まで払える見通しなどがなければ計画は認められません。財産と収入の資料を出してから、利用する手続と総額を比べてください。
36回払いの試算表は、最終回の端数まで見る
次の表は、住宅ローン・担保付き債務・特別な請求がなく、清算価値も、給与所得者等再生の場合の可処分所得2年分も、借金額による下限を超えないと仮定した計算です。実際の返済額を保証する表ではありません。
全債権者への返済額を一つの残高として扱い、第1〜35回は1円未満を四捨五入し、第36回に差額を合わせています。実際には債権者ごとの配分や振込料などもあるため、下表の各回の額がそのまま返済予定表になるわけではありません。
| 一般の借金 | 返済総額の仮定 | 第1〜35回・各回 | 第36回 |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 100万円 | 27,778円 | 27,770円 |
| 300万円 | 100万円 | 27,778円 | 27,770円 |
| 500万円 | 100万円 | 27,778円 | 27,770円 |
| 600万円 | 120万円 | 33,333円 | 33,345円 |
| 1,000万円 | 200万円 | 55,556円 | 55,540円 |
| 1,500万円 | 300万円 | 83,333円 | 83,345円 |
| 2,000万円 | 300万円 | 83,333円 | 83,345円 |
| 3,000万円 | 300万円 | 83,333円 | 83,345円 |
| 4,000万円 | 400万円 | 111,111円 | 111,115円 |
| 5,000万円 | 500万円 | 138,889円 | 138,885円 |
例えば100万円なら、27,778円を35回払うと972,230円で、最後は27,770円です。27,778円を36回とすると合計1,000,008円になり、8円多くなります。「約」と付けた月額だけで総額を決めず、各回の合計と債権者別の支払先も読み合わせてください。
返済期間は原則3年。36回は毎月払いを仮定した回数
民事再生法229条は、原則として、認可決定の確定日から3年後の日が属する月に最後の弁済期を置くと定めています。特別な事情がある場合は、確定日から5年を超えない範囲で期間を延ばす計画もありますが、本人が自由に5年を選べるわけではありません。
法律上の基本は3か月に1回以上の分割払いで、必ず毎月36回と決まっているわけでもありません。120万円を毎月36回で返す場合、第1〜35回は33,333円、最終回は33,345円という仮定になります。毎月60回なら各2万円ですが、5年の計画を認める条件と、実際の支払日を先に相談してください。
住宅ローン・税金・費用も含め、毎月の家計に当てはめる
住宅資金特別条項を使う場合も、住宅ローンの元本を一般の借金と同じ割合で減らす制度ではなく、原則として元本全額を返す計画です。住宅の用途、抵当権、代位弁済などに条件があるため、自宅を残せるとは限りません。ローン契約書、返済予定表、登記事項証明書、届いた通知を相談先へ示します。
税金、養育費など、一般の借金と同じ割合で減らせない支払もあります。住宅ローンやこれらの支払、計画返済を同じ月の欄に書き、二重に数えたり抜かしたりしないようにしましょう。
さらに、個人再生の申立手数料は収入印紙1万円で、郵便料や予納金、個人再生委員が選任される場合の費用などが別にかかります。額と納め方は裁判所で異なり、弁護士等への報酬も別です。費用の内訳は個人再生の裁判所費用と依頼費用も参照し、申立てまでに払う額と、返済開始後にも払う額を分けて尋ねてください。
月5万円を返す予定でも、家計の余りが4万円なら不足する
手取り月収28万円、住宅費を含む毎月の生活費21万円、年払いの税金・保険・更新費等が合計36万円という仮定です。年払い分を月3万円ずつ積み立てると、28万円 − 21万円 − 3万円 = 月4万円が残ります。計画返済が月5万円なら、毎月1万円不足します。
手続費用や臨時の医療費をまだ含めていなければ、その分も見込みます。残業代や賞与が減る場合も試算し、返済のために借入れを増やす計画にはしないでください。不足する月と額が分かる家計表を持ち、手続の選択も含めて相談します。
相談には、残高・財産・家計が分かる資料を持参する

- 債務:借入先ごとの明細、請求書、契約書、保証人の有無。残高に争いがある場合は、違うと考える額と根拠も伝える。
- 財産:すべての口座、保険の解約返戻金、車・不動産、退職金等の資料。直近の名義変更や売却も申告する。
- 収入:給与明細、源泉徴収票、確定申告書など。転職・休職・退職の予定と時期も伝える。
- 支出:毎月の生活費、年払い、税金や養育費の滞納、手続費用の支払予定。住宅ローンは別欄で額と支払日を示す。
- 期限:裁判所の書類や通知と封筒。受取日、回答日、次回の返済日をメモする。
個人再生の計画や利用の可否は弁護士などへ相談します。家計については、日本クレジットカウンセリング協会の窓口も、収支・生活と債務の返済方法を相談対象として案内しています。対応できる内容と利用方法は各窓口へ尋ねてください。
費用が不安な人は法テラスの無料法律相談や費用立替も相談できます。立替は資力などの条件と審査があり、原則として分割で返します。民事再生の予納金は、生活保護の受給の有無にかかわらず立替対象外です。「無料相談なら費用もすべて無料」と考えず、自己負担する額を見積りに入れましょう。
手続の比較は債務整理の方法を選ぶときの判断材料、返済が迫るときの行動は借金を返せないときに取る対応にもまとめています。
返済額についてよくある質問
収入が高ければ、返済額も必ず増えますか?
収入だけで一律には決まりません。小規模個人再生と給与所得者等再生では下限の基準が異なり、後者は法定の可処分所得2年分を比べます。家族構成や財産も示し、利用できる手続ごとに試算してもらってください。
自宅の価値は、住宅ローンがあれば無視できますか?
無視できません。不動産の価値と住宅ローン残高などは清算価値の検討にも関わります。残債の額だけで判断せず、評価資料と担保の内容を相談先へ見せます。
認可後、病気などで払えなくなったらどうしますか?
支払日を過ぎる前に担当した専門家へ連絡し、不足額、原因、収入が戻る見通しを伝えます。やむを得ない事情では計画変更を申し立てられる場合がありますが、延長や免除は自動ではありません。再生計画を履行しないまま放置すると、債権者の申立てで計画が取り消されることもあります。
総額の下限を比べてから、支払日ごとの家計を作る
最低弁済額は計算の一部です。清算価値と、手続によっては可処分所得2年分も比べ、決めた総額を返済回数に分けます。最終回の端数、住宅ローン、税金、手続費用まで含め、続けて払えるかを考えてください。借金額だけで結論を出さず、残高と家計が分かる資料を持って相談を始めましょう。
参照した一次情報
2026年10月6日閲覧。法定の基準は現行の民事再生法と裁判所の案内で照合しています。大分地裁の旧資料は制度の比較を補うために参照し、掲載された家族モデルの可処分所得や当時の地域別費用を本稿の試算には使っていません。提出資料と費用は申立先の最新案内に従ってください。

