任意整理は、支払能力に応じた返済計画を立て、個々の債権者と返済方法について和解を目指す債務整理です。住宅ローンや自動車ローンなど、従来どおり返済を続けたい債務がある場合には、交渉を依頼する債務と継続返済を予定する債務を分けて検討することがあります。
ただし、対象外にしただけで住宅や車を残せる、保証人への請求を避けられるとは限りません。対象外にする債務も約定どおり返済できる家計が必要なため、契約内容と収支を確認したうえで判断しましょう。
結論:任意整理では債務ごとに依頼範囲を検討できることがあるが、希望どおりに対象外にできるとは限らない
任意整理は、裁判所へ一括して申立てる手続ではなく、個々の債権者との話合いによって返済方法の和解を目指す方法です。どの債務について交渉を依頼するかは、残したい契約、返済能力、保証人の有無などを踏まえて検討されます。
一方、依頼対象から外した債務について従来どおり返済を続けられるか、ほかの契約に影響がないかは別の問題です。対象外にする理由だけで決めず、すべての債務と毎月の収支を確認し、返済全体が成り立つかで判断することが重要になります。
「対象外」と「返済不要」は別の意味
任意整理における「対象外」とは、その債権者との返済条件の交渉を依頼しない、または交渉の対象に含めない考え方です。借金そのものがなくなるわけではなく、返済義務を免れる意味でもありません。
そのため、対象外にした住宅ローン、自動車ローン、保証人付き債務などは、通常どおり支払えるかを家計上で確認することが欠かせません。支払いが難しい場合は、対象の選び方だけで解決しようとせず、利用する手続全体を見直す必要があります。
任意整理では全債務を把握してから方針を考える
一部の債務だけを見て方針を決めると、対象外にした債務の返済額や生活費を見落とすおそれが生じます。相談時には、整理を希望する借金だけでなく、住宅ローン、車のローン、保証債務、税金・社会保険料などを含め、把握している支払いを漏れなく伝えましょう。
対象外にするか検討されやすい債務と確認点

任意整理の対象から外すかを考える債務には、生活や仕事に関わる契約が含まれることがあります。同じ種類のローンでも、契約条項、滞納の有無、担保や所有関係によって確認すべき点は異なります。
| 債務・契約の例 | 対象外を検討する理由の例 | 事前に確認したいこと |
|---|---|---|
| 住宅ローン | 自宅での生活を続けたい | 毎月の返済継続性、滞納状況、契約内容 |
| 自動車ローン | 通勤・通院・仕事で車が必要 | 完済状況、契約上の所有者、返済の見通し |
| 保証人付き債務 | 保証人への影響が心配 | 保証契約の内容、債務残高、返済状況 |
| 借入先銀行の口座 | 給与・年金などの受取口座を利用している | 借入れの有無、入出金予定、口座の使い方 |
| 携帯端末代・公共料金 | 通信や生活インフラを維持したい | 未払分と今後分の区分、契約名義、支払方法 |
表は、対象外にすれば契約や財産を維持できることを示すものではありません。契約ごとの事情を確認し、継続返済を選んだ後も生活費が不足しないかまで見通すことが必要です。
住宅ローンは住居費を含めて返済を続けられるか確認する
住宅ローンを任意整理の交渉対象から外す場合でも、月々の返済は続きます。住宅ローンだけでなく、固定資産税、管理費・修繕積立金などを含めた住居費と、任意整理後に予定する返済額を合わせて、家計が維持できるかを確認してください。
住宅を維持したい希望があるときは、滞納の有無や今後の収入見込みも含めて早めに伝えることが重要です。個人再生には住宅資金貸付債権に関する特則が設けられているため、任意整理だけに絞らず、事情に合う手続を比較しましょう。任意整理すると住宅ローンはどうなる?自宅を残すための確認点を解説
自動車ローンは所有関係と返済状況を確認する
車を仕事や通院で使っている場合、自動車ローンを対象外にしたいと考えることがあります。しかし、車を残せるかは、任意整理の対象にしたかどうかだけで決まるものではありません。ローン契約と車の所有関係を確認する必要があります。
完済済みか、返済中か、誰が所有者として登録されているかによって、検討すべき点は異なります。ローン会社への連絡や支払いを自己判断で止める前に、契約書・車検証・返済予定表を用意し、事情を具体的に相談しましょう。任意整理すると車はどうなる?自動車ローン返済中・完済後に確認すべきこと
保証人付きの借金は保証人への影響を先に確認する
保証人付きの借金を対象外にしたい理由として、保証人に迷惑をかけたくないという不安があります。ただし、任意整理で当該債務を対象外にしたことだけで、保証人の責任がなくなるわけではありません。
保証人への影響は、保証契約の内容、主債務の返済状況、債権者との合意内容などを踏まえて確認する必要があります。保証人がいる事実や、本人に知らせる時期について不安がある場合も、相談の初期段階で専門家へ伝えてください。任意整理すると保証人はどうなる?請求への影響と相談前の確認点を解説
借入先銀行の口座・携帯端末代・公共料金は契約ごとに分けて確認する
借入先に銀行が含まれる場合、給与や年金の受取口座、公共料金やクレジットカードの引落口座として利用していることがあります。また、携帯電話については、通信サービスの利用料、端末の分割代金、未払料金を同じものとして扱えない場合があります。
生活に必要な契約を維持したい場合でも、対象外にすることだけで希望どおりの結果になるとはいえません。契約名義、未払分、今後発生する料金、支払方法を分けて把握し、対応の要否を確認しましょう。
借入先銀行の口座は入金と引落しの予定を整理する
借入先銀行の口座を生活口座として使っている場合は、給与・年金などの入金日、家賃や公共料金などの引落日、口座残高を整理しておくことが大切です。口座の取扱いは借入れや契約の状況によって異なるため、資金移動や支払いを急いで自己判断せず、いつ何を確認すべきかを相談先に確認してください。任意整理で銀行口座は凍結される?借入先銀行・給与振込で確認したい注意点
携帯端末代と公共料金は未払分・今後分・支払方法を確認する
携帯端末の分割代金、通信料金、電気・ガス・水道などの公共料金は、契約先や支払方法が異なります。未払分があるか、今後分はどの方法で支払う予定か、契約名義は誰かを一覧にしておくと、相談時に事情を伝えやすくなります。
対象外の借金を返し続ける前に家計を確認する

対象外にした債務を返済し続けるには、毎月の手取り収入から生活費、税金・社会保険料、住居費、対象外債務の返済、任意整理後の返済額を差し引いても、赤字にならない計画が必要です。短期的に支払えても、賞与や臨時収入だけを前提にした計画には注意が必要です。
家計表には不定期支出も入れる
家計表には、食費や光熱費だけでなく、更新料、保険料、車検費用、医療費、教育費など、時期によって発生する支出も見込んでください。毎月の返済額だけを基準に対象外の債務を決めると、数か月後に資金不足となるおそれがあります。
法律面の相談と家計の整理を並行して進める
契約内容、保証人、手続の選択といった法律面は、弁護士・司法書士などへ確認することが必要です。一方で、返済を続けられるかという家計面は、収入と支出を具体的に整理して検討します。
日本クレジットカウンセリング協会では、債務整理などの法的手続に関する面と、生活再建のための家計に関する面の両方を扱うカウンセリングを案内しています。必要に応じて法律相談と家計の整理を並行し、返済方法を検討する際の参考にしてください。
偏った返済や他の債務整理への影響にも注意する
任意整理では、債務ごとに交渉の依頼範囲を検討することがあります。ただし、すでに返済が難しい状態で特定の債務だけを優先して支払う場合は、支払いの時期、金額、目的などを含めて確認が必要です。
一部の支払いを始める・止める前に全体像を伝える
住宅ローンや自動車ローン、保証人付き債務を残したい事情があっても、返済の優先順位を本人だけで決めると、後の方針の検討が難しくなることがあります。特定の債権者への支払いを始める・止める判断の前に、全債務、収入、財産、保証関係を相談先へ開示してください。
任意整理以外の手続も視野に入れて確認する
任意整理後の返済計画が成り立たない場合には、個人再生や自己破産を含めて検討することがあります。どの手続が適するか、対象外にしたい債務をどのように扱うかは、債務額、収入、財産、契約内容などによって異なるため、個別に確認しましょう。
債務の一覧化や、任意整理の対象をどう考えるべきかを個別事情に沿って確認したい場合は、法律事務所への相談も選択肢です。
【PR】借金問題について、専門家への相談を検討している方へ
「無料相談で現状を整理する」広告先への相談・依頼によって、債務整理の成立、返済額の減額、または特定の結果が得られることを示すものではありません。契約前に、説明を受けた内容、費用、支払い方法、対応範囲を確認してください。
相談・契約の可否、債務整理の方針、返済条件などは、収入・債務・契約内容によって異なります。広告掲載は個別の結果や解決を保証するものではありません。
任意整理の対象を相談するときの準備
相談時には、「この借金を外したい」という希望だけでなく、なぜ外したいのか、外した後もいくら支払えるのかを伝えることが重要です。住宅や車、保証人、口座などに関する資料があると、契約関係を確認しながら方針を検討しやすくなります。
用意するとよい資料
借入れ、残したい財産、収支の状況が分かる資料を用意すると、相談時に全体像を伝えやすくなります。手元にある範囲で、次の資料を整理しておきましょう。
- 債権者名、借入残高、毎月返済額、返済日が分かる一覧
- 住宅ローン・自動車ローン・保証契約に関する契約書や返済予定表
- 車検証、住宅に関する資料など、残したい財産の状況が分かるもの
- 通帳、給与明細、年金通知書など、収入と支出を確認できる資料
- 督促状、請求書、裁判所から届いた書類があればその原本
資料は完璧にそろっている必要はありませんが、把握している債務や保証関係を漏れなく伝えることが重要です。
資料がそろっていない場合も相談先へ事情を伝える
資料がすべてそろっていなくても、手元にある書類から相談を始めることはできます。ただし、債務を一部だけ伝えると適切な検討が難しくなるため、把握している借入れや保証関係は漏れなく伝えましょう。
経済的に困っている場合、法テラスでは、収入・資産などの条件を満たす人を対象に、弁護士・司法書士との無料法律相談や費用立替制度を案内しています。利用条件や手続は事前に確認してください。
任意整理の対象外に関するよくある質問
任意整理で債権者を選べますか?
任意整理は個々の債権者との話合いによる方法であるため、交渉を依頼する債務と継続返済を予定する債務を分けて検討することがあります。ただし、どの債務を対象外とするかは、返済能力、契約内容、保証人や財産への影響を踏まえた個別判断です。
希望する債務だけを外せば問題がないとは限りません。対象外にした債務を約定どおり返済しながら、任意整理後の返済も継続できるかを家計全体で確認してください。
任意整理で住宅ローンを対象外にすれば自宅は残せますか?
住宅ローンを対象外にすることだけで、自宅を残せるとはいえません。住宅ローンの返済状況、契約内容、今後の返済原資などを確認し、継続返済が可能かを判断する必要があります。
住宅を維持したい事情がある場合は、任意整理以外の手続も含めて比較することが重要です。個人再生には住宅資金貸付債権に関する特則があるため、選択肢を狭めずに専門家へ相談しましょう。
保証人付きの借金を対象外にすれば保証人への請求を防げますか?
対象外にすれば保証人への請求を防げる、と一律にはいえません。保証人への影響は、保証契約の内容、主債務の返済状況、債権者との合意内容などによって確認が必要です。
保証人がいる事実は、相談の初期段階で必ず伝えてください。保証人に関わる債務をどう扱うかは、本人だけで決めず、契約書を確認したうえで個別に判断することが大切です。
まとめ:対象外にする借金も含め、返済全体が続くかで判断する
任意整理では、個々の債権者と返済方法を話し合うため、交渉を依頼する債務と、対象外として継続返済を予定する債務を分けて検討することがあります。しかし、住宅ローンや自動車ローン、保証人付き債務などを対象外にすれば希望がかなう、と断定することはできません。
大切なのは、すべての債務と家計を見える化し、対象外にする債務を含めて返済が継続できるかを確認することです。返済で生活費が不足している、今後の支払いに不安がある場合は、早期に専門家や公的な相談窓口へ相談してください。
参考にした公的機関・公式情報
- 公益財団法人日本クレジットカウンセリング協会「任意整理」
- 公益財団法人日本クレジットカウンセリング協会「よくあるご質問」
- 公益財団法人日本クレジットカウンセリング協会「ご相談などは一切無料」
- 法テラス「無料法律相談・弁護士等費用の立替」
- 裁判所「民事再生規則」
基準日:2026年8月21日。任意整理の対象に含める債務・対象外とする債務、および住宅・車・保証人への影響は、契約内容や返済状況などによって異なります。個別事情は弁護士などの専門家に確認してください。

