個人再生をしても、生命保険が一律に解約されるわけではありません。個人再生では財産を保有し続けられる場合がある一方、申立人が契約者である生命保険に解約返戻金があるときは、その金額が財産として確認され、清算価値を通じて最低弁済額に影響する可能性があります。
したがって、「個人再生をするなら保険を解約しなければならない」とも、「解約返戻金があっても必ず保険を残せる」とも一律にはいえません。契約者、解約返戻金、契約者貸付、保険料、家計全体を確認し、申立先の裁判所の運用や個別の財産状況を踏まえて判断する必要があります。申立て前に名義変更や解約を独断で進めず、まずは資料をそろえましょう。
個人再生をしても生命保険が一律に解約されるわけではない
個人再生は、継続的または反復した収入を得る見込みがある人が、法律上の要件のもとで再生計画に従った分割返済を行う手続です。裁判所の案内では、個人再生では自宅や自動車などの財産を保有し続けられる場合がある一方、保有資産の評価額が返済すべき額に関係すると説明されています。
生命保険についても、個人再生を申し立てたことだけを理由に一律に解約されるものではありません。ただし、保険契約から生じる権利や解約返戻金の有無・額は、財産状況を確認する重要な事項です。
確認の出発点は被保険者や受取人ではなく契約者
生命保険では、誰が被保険者か、誰が保険金受取人かだけでなく、誰が契約者として契約上の権利を持っているかを確認します。申立人本人が契約者であり、解約返戻金がある契約なら、その内容を財産関係の資料として確認することになります。
家族に関係する保険であっても、口頭の説明や名義の印象だけで判断しないことが大切です。保険証券、契約内容のお知らせ、保険会社が発行する証明書などで、契約者・被保険者・受取人を分けて確認してください。
解約返戻金の有無を保険会社の資料で確認する
終身保険、養老保険、貯蓄性のある保険などでは、解約返戻金が発生することがあります。一方、掛け捨て型と考えている保険でも、特約や契約内容によって確認事項が異なるため、自己判断で「返戻金はない」と決めないようにしましょう。
現在の解約返戻金額は、保険会社に確認する必要があります。相談や申立て準備を円滑に進めるためにも、契約内容とあわせて資料で把握しておくことが大切です。
解約返戻金は個人再生の清算価値に影響する

個人再生では、債務総額に応じて定まる最低弁済額だけでなく、現在保有している資産の評価額合計も確認の対象です。大阪地方裁判所は、現金・預貯金・保険の解約返戻金・不動産などの評価額合計と、債務総額に応じた基準を比較し、高い方が最低でも返済しなければならない金額になると案内しています。
この財産評価額を踏まえた考え方が、一般に清算価値と呼ばれます。解約返戻金だけで結論が決まるのではなく、預貯金、不動産、自動車などを含む財産全体と、利用する個人再生の手続を前提に確認します。
保険を確認する際は、返戻金の額だけでなく、契約内容と家計への影響も合わせて整理します。主な確認項目は次のとおりです。
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 解約返戻金の額 | 財産評価額として清算価値に影響し得るため |
| 契約者 | 契約上の権利を誰が持つかを確認するため |
| 契約者貸付の残高 | 保険契約の現在の状況を正確に把握するため |
| 月々の保険料 | 再生計画に沿った返済を続けられる家計か確認するため |
| 保険種類・特約 | 解約返戻金の有無や契約内容を確認するため |
表の項目をそろえて確認することで、保険を継続したい事情と財産・家計の状況を分けずに把握できます。返戻金だけを見て、保険の扱いを決めないことが重要です。
解約返戻金を含む財産評価額が高い場合の影響
保険の解約返戻金を含む財産評価額が、債務総額から算出される基準より高い場合、最低弁済額を考えるうえで財産評価額が重要になります。返戻金があることを理由に直ちに解約を考えるのではなく、返戻金を含めた財産全体を正確に把握することが先です。
給与所得者等再生では別の基準も確認する
給与所得者等再生では、債務総額や資産評価額に加え、法律によって定められる2年分の可処分所得額との関係も確認されます。そのため、解約返戻金だけを見て返済額を断定することはできません。
個人再生の最低弁済額と月々の返済額の考え方は、個人再生の返済額はいくら?最低弁済額と月々の支払いを計算例で解説でも整理しています。
契約者貸付と保険料も申立て前に整理する
生命保険に契約者貸付がある場合は、貸付残高だけでなく、現在の解約返戻金額、契約の継続状況、保険料の払込み状況を確認します。契約者貸付と解約返戻金の関係は商品・契約内容によって異なり得るため、保険会社が発行する最新の資料で確認することが重要です。
契約者貸付があっても保険関係の資料をそろえる
契約者貸付を利用している場合も、解約返戻金の確認を省略せず、貸付残高と返戻金額の両方が分かる資料を用意しましょう。資料の名称や発行方法は保険会社ごとに異なるため、保険会社への問い合わせが必要です。
保険料を含めて再生計画を履行できる家計か確認する
個人再生では、再生計画に従って返済を継続する見通しが必要です。保険を継続したい場合も、保障の必要性だけでなく、生活費、住宅費、教育費、医療費などと合わせて、保険料を支払いながら返済を続けられるかを確認します。
すでに生活費が不足している、返済のための借入が続いているという場合は、保険料を含む毎月の固定費と借入状況を一覧にしてください。法律上の手続選択は弁護士等に相談し、家計管理の支援が必要な事情があるときは家計に関する相談先も併せて利用するなど、役割を分けて並行して整理する方法があります。
個人再生の申立て前にそろえたい保険関係の書類

個人再生の手続は、債務・収入・財産の状況を基に進められるものです。裁判所の案内でも、個人再生委員は債務者の財産や収入の状況を調査し、適正な分割返済計画の作成に必要な勧告を行うとされています。
保険会社から取得を検討する書類
契約内容、返戻金、貸付、保険料の状況を確認できる書類をまとめます。確認したい資料の例は以下のとおりです。
- 保険証券、または契約内容が分かる書面
- 解約返戻金証明書、または現在の解約返戻金額が分かる書面
- 契約者貸付がある場合は、その残高が分かる書面
- 保険料の金額・払込方法・払込み状況が分かる書面
- 特約を含む契約内容が分かる書面
上記は契約状況を整理するために確認したい資料の例です。実際に必要となる書類、資料の基準日、提出の要否は、申立先の裁判所や個別事件の進行によって異なるため、依頼する専門家または提出先の案内に従ってください。
一覧にして相談時に伝える項目
相談時には、保険ごとの情報を一覧にしておくと契約の全体像を共有しやすくなります。記載する項目の例を確認しましょう。
- 保険会社名、保険種類、証券番号
- 契約者・被保険者・受取人の氏名
- 解約返戻金の見込額と確認日
- 契約者貸付の有無と残高
- 月額または年額の保険料、払込方法
この一覧は、保険を処分するためのものではなく、契約の全体像を正確に共有するためのものです。保険証券が見当たらない場合も、保険会社に契約内容や解約返戻金に関する資料の発行方法を確認しましょう。
保険の名義変更や解約を独断で進めない
解約返戻金への影響を避けようとして、個人再生の申立て前に保険の名義変更や解約を独断で進めることは避けましょう。個人再生では財産や収入の状況を確認して再生計画を作成するため、保険契約に動きがある場合も含め、事実関係を正確に説明できるようにしておくことが大切です。
名義だけで申告対象外と判断しない
家族名義の保険や、家族が保険料を負担している契約であっても、申立人との関係を契約書類で確認する必要があります。申立人以外の名義であることだけを理由に、資料を確認しないまま申告対象外と判断することは避けてください。
保険を残したい事情と家計上の負担をまとめて相談する
必要な保障があるため保険を継続したい場合と、保険料が家計を圧迫して見直しを考える場合では、確認すべき事情が異なります。契約内容、解約返戻金、契約者貸付、家計、債務額を開示したうえで、手続に詳しい弁護士等へ相談し、保険の扱いを含む方針を検討しましょう。
相談先を使い分け、手続と家計を同時に整理する
個人再生の利用条件、財産の申告、再生計画の内容といった法律上の判断は、弁護士等への相談が中心になります。大阪地方裁判所も、裁判所は一方当事者からの相談には応じられないとして、債務整理の相談は弁護士にするよう案内しています。
費用面が心配な場合は、法テラスの無料法律相談や弁護士・司法書士費用の立替制度について確認することも選択肢です。利用には収入・資産などの要件があるため、制度の対象となるかは法テラスの案内で確認してください。
個人再生の利用条件や進み方を先に確認したい方は、個人再生とは?利用条件・返済額の考え方・手続きの流れを解説をご覧ください。手続全体の利点と注意点は、個人再生のメリット・デメリットとは?住宅・保証人・信用情報への影響を解説で確認できます。
個人再生を含む債務整理について、保険契約・家計・返済見通しを整理しながら相談先を検討したい場合は、法律事務所への相談も選択肢の一つです。
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「無料相談で現状を整理する」広告先への相談・依頼によって、債務整理の成立、返済額の減額、または特定の結果が得られることを示すものではありません。契約前に、説明を受けた内容、費用、支払い方法、対応範囲を確認してください。
相談・依頼の可否、手続の選択、費用、再生計画の認可や返済結果は、個別の事情によって異なります。広告掲載先の利用によって特定の結果が得られることを示すものではありません。
個人再生と生命保険でよくある質問
掛け捨ての生命保険も確認が必要ですか?
確認が必要となる場合があります。解約返戻金がないと考えられる契約であっても、加入中の保険の内容や提出すべき資料について確認を求められることがあるためです。
返戻金がないと自己判断して省略せず、契約内容が分かる書面を用意し、提出の要否を確認してください。
解約返戻金が少額なら申告しなくてよいですか?
少額と思われる場合でも、申告の要否を自分だけで決めることは避けましょう。個人再生では保有資産の評価額が返済額の判断に関係するためです。
保険会社の資料で金額を確認し、代理人または申立先の案内に従ってください。
個人再生後も保険料を払い続けられますか?
保険料を継続して支払えるかは、再生計画に基づく返済額と家計収支の両方から確認します。保障の必要性だけでなく、計画どおりの返済を続けられる見通しも重要です。
保険料を含めた毎月の支出を事前に整理し、個別の事情に応じて確認してください。
まとめ:生命保険は返戻金・契約者・家計をそろえて確認する
個人再生をしても、生命保険が当然に解約となるわけではありません。ただし、申立人が契約者である保険の解約返戻金は財産として確認され、清算価値を通じて最低弁済額に影響する可能性があります。
保険証券、解約返戻金証明書などの返戻金額が分かる資料、契約者貸付の残高資料、保険料が分かる書面をそろえましょう。名義変更や不自然な解約を行う前に、契約内容・財産状況・家計を開示して、個別事情に応じた助言を受けることが大切です。
参考にした公的機関・公式情報
基準日:2026年8月20日。本記事は一般的な情報です。生命保険の扱い、清算価値、必要書類、再生計画への影響は、契約内容・財産状況・申立先の裁判所の運用により異なります。申立てや保険の変更・解約を行う前に、個別事情を専門家へ相談してください。公開時には、現行の法令・裁判所案内・広告掲載条件を改めて確認してください。

