個人再生を検討するとき、「退職する予定がないのに、退職金まで返済額へ影響するのか」と気になる方は少なくありません。
結論として、退職予定がない在職中でも、退職金制度がある場合には、見込額や制度内容を確認する資料の提出を求められることがあります。個人再生では借金額だけでなく、保有財産の評価額も返済額の検討に関係するためです。
ただし、退職金が常に全額で扱われるわけではなく、見込額の一定割合が全国の裁判所で共通して用いられるわけでもありません。退職済み・退職予定・在職中で退職予定がない場合に分け、申立先の裁判所の案内や勤務先の規程を確認することが重要です。
個人再生では、退職予定がなくても退職金が清算価値に関係することがある
個人再生の返済額は、借金総額を基準に定まる最低弁済額だけで決まるものではありません。裁判所が公開している案内では、債務総額に応じた金額と、現に保有している資産の評価額合計を比べ、高い方が最低でも返済すべき金額になると説明されています。
財産を清算した場合に債権者へ配当される額を下回らないようにする考え方は、一般に清算価値保障原則と呼ばれます。退職金は、すでに受け取ったか、近く支給されるか、在職中の見込額かによって確認のされ方が異なるため、一律に判断しないことが大切です。
個人再生の基本的な利用条件や手続の全体像は、個人再生とは?利用条件・返済額の考え方・手続きの流れを解説もあわせて確認してください。
清算価値は退職金だけで決まらない
清算価値を確認する際は、退職金だけを切り離して判断しません。預貯金、保険の解約返戻金、不動産、自動車などを含む財産の状況を確認し、その評価額合計が返済額に影響します。
そのため、「退職金見込額があるから個人再生は使えない」と直ちにいえるわけではありません。一方で、退職金に関する資料を出さずに申立てを進めることも避けるべきです。
財産と収入を正確に申告したうえで、再生計画を履行できる見込みを具体的に検討することが重要です。
退職金の状況別に確認したいポイント

退職金が返済額へどう影響するかを考えるには、現在の勤務状況と受領状況を分けて確認します。申立て前後に退職金を受け取る予定があるか、すでに受領して預金として保有しているかは、財産状況の説明に関わります。
| 状況 | 主な確認事項 | 資料を確認する目的 |
|---|---|---|
| すでに退職して退職金を受領した | 受領額、使途、現在の預金残高など | 申立時点で保有する財産を把握するため |
| 退職予定があり、支給見込みがある | 退職時期、支給見込額、支給条件など | 申立時点・手続中の財産変動を確認するため |
| 在職中で退職予定がない | 退職金制度の有無、自己都合退職時の見込額など | 退職金請求権の評価が必要かを確認するため |
重要なのは、実際に受け取ったかどうかだけではありません。在職中であっても退職金制度がある場合は、制度内容や見込額を確認する場面があります。
反対に制度がない場合にも、制度がないことを示す資料を求められることがあります。
退職済みで退職金を受け取った場合
退職金をすでに受領している場合は、申立て時点で残っている現金・預貯金が財産として確認の対象です。受領後に生活費や債務の返済へ充てていた場合も、受領額、時期、使途を説明できるよう、通帳や支給明細などを保管しておきましょう。
申立て直前に財産を隠す目的で処分したり、使途を曖昧にしたりすることは適切ではありません。受領から申立てまでのお金の動きを正確に伝え、必要な説明資料を準備することが大切です。
退職予定がある場合
申立て前または個人再生の手続中に退職する予定があるときは、退職金の支給見込みだけでなく、退職後の収入の継続性も確認事項になります。個人再生は、将来にわたり継続的または反復して収入を得る見込みがあることを要件とする手続です。
退職によって収入が減る、または無収入となる見込みであれば、計画どおりの返済が可能かを改めて検討する必要があります。退職日、退職金の予定額、退職後の収入見込みを早めに整理し、法律相談の際に共有しましょう。
退職予定がない在職中の場合
退職予定がない場合でも、退職金制度があるなら、自己都合で退職した場合の見込額などを確認する裁判所の公開書式があり、例えば、千葉地方裁判所が公開する個人再生の申立書式には、退職金請求権・退職慰労金の欄が設けられ、見込額を明らかにする資料の提出案内が記載されています。
同書式には、在職中の退職金見込額について8分の1相当額を記載する案内もあります。ただし、これは千葉地方裁判所の公開書式に基づく取扱いです。
全国一律の基準と断定せず、申立先の裁判所の書式・運用と、個別の雇用条件を確認してください。
退職金見込額証明書や就業規則など、必要書類を準備する

退職金に関する書類は、退職金の有無だけでなく、見込額の根拠や制度がないことを説明するために使われます。書類の名称、提出の必要性、代替資料の可否は裁判所や事案によって異なるため、申立て前に提出先の案内を確認してください。
退職金の見込額を示す資料
見込額や計算の根拠を確認するため、次のような資料が検討対象になります。
- 勤務先が作成した退職金見込額証明書・退職金証明書
- 退職金規程、就業規則、雇用契約書など制度内容が分かる資料
- 退職金の計算根拠が分かる資料
千葉地方裁判所の公開書式では、退職金見込額を明らかにする資料として、使用者作成の退職金証明書、または退職金規程と申立人代理人作成の退職金計算書が案内されています。どの資料を提出できるかは勤務先の制度や申立ての状況によって異なるため、勤務先へ依頼する前に確認しましょう。
退職金制度がないことを示す資料
退職金制度がない場合でも、その事実を説明する資料が必要になることがあります。千葉地方裁判所の公開書式では、退職金が支給されない場合に、就業規則などの資料を提出する案内が示されています。
ただし、この取扱いも同裁判所の公開書式に基づくものです。制度がない場合を含め、必要な資料は申立先の裁判所や個別事情によって異なります。
受領済みの退職金に関する資料
受領後のお金の動きや、現在残っている財産を説明するためには、次のような資料を整理します。
- 退職金の支給明細
- 受領後の入出金が分かる預金通帳や取引明細
- 生活費などに充てた場合の使途を確認できる資料
受領済みの退職金については、受領額だけでなく、申立て時点でどのような財産として残っているかを説明できるようにすることが重要です。資料を自己判断で処分せず、提出が必要な範囲を法律相談で確認してください。
退職金があるときの返済額の考え方
個人再生では、借金総額に応じた最低弁済額と、財産の評価額合計を比較する考え方があります。退職金に関する評価額が清算価値に含まれる場合、その分だけ計画弁済総額の検討が必要になる可能性があります。
ただし、退職金見込額の全額をそのまま足すと決めつけることはできません。退職済みか在職中か、退職が具体化しているか、勤務先の制度内容、申立先の裁判所の運用などを踏まえて確認する必要があるためです。
最低弁済額と月々の返済計画の関係は、個人再生の返済額はいくら?最低弁済額と月々の支払いを計算例で解説で整理しています。退職金だけに目を向けず、家計から継続して支払える金額も同時に確認してください。
退職金を理由に急いで退職・受領・処分しない
個人再生を検討しているからといって、退職金への影響を避ける目的で退職時期を変えたり、受領したお金を急いで使い切ったりすることは適切ではありません。退職は収入や生活基盤に大きく関わるため、手続上の都合だけで判断しないことが必要です。
財産や収入の状況は正確に申告し、申立ての準備中や手続中に退職・受領などの変動があれば、速やかに相談先へ伝えることが基本です。返済で生活費が不足している、借金が増えていると感じる場合は、追加借入れでしのぐ前に、債務と家計の全体を整理しましょう。
個人再生を選ぶ際の利点と注意点は、個人再生のメリット・デメリットとは?住宅・保証人・信用情報への影響を解説で確認できます。退職金、住宅、車、毎月の収支をまとめて比較することが、手続選択の前提です。
個人再生を検討するときの相談先と進め方
相談では、退職金だけでなく、借入れ、収入、保有財産、毎月の支出をまとめて確認します。手元の資料を整理し、法律上の確認と家計の見直しを必要に応じて並行して進めることが大切です。
相談前に整理しておく情報
まず、借入先と残高、収入と支出、保有財産、退職予定の有無、退職金制度の有無を整理しましょう。退職金をすでに受領している場合は、受領額、受領日、現在の残額、主な使途も確認します。
資料が全て揃っていなくても、手元にある通帳、給与明細、退職金規程や就業規則などを持参・提示すれば、優先して確認すべき資料を整理しやすくなります。
法律相談と家計の相談は役割を分けて並行する
個人再生の利用要件、退職金に関する資料、申立て手続や再生計画については、弁護士または認定司法書士の法律相談で確認する事項です。一方、毎月の収支を把握し、返済を続けられる家計に整えることは、家計管理の相談や支援も活用しながら進めることができます。
法律上の判断と家計の見直しは役割が異なります。どちらか一方だけで済ませようとせず、必要に応じて並行して相談し、返済計画の実現可能性を検討しましょう。
法テラスなどの制度を確認する
裁判所は、一方当事者からの個別の債務整理相談には応じられない旨を案内しています。資力要件などを満たす場合には、法テラスの無料法律相談や、弁護士・司法書士費用の立替制度を利用できることがあります。
利用条件は公式情報で確認してください。個人再生を含む債務整理について相談先を探している場合、法テラスは選択肢の一つです。
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「無料相談で現状を整理する」広告先への相談・依頼によって、債務整理の成立、返済額の減額、または特定の結果が得られることを示すものではありません。契約前に、説明を受けた内容、費用、支払い方法、対応範囲を確認してください。
相談の可否、依頼条件、費用、手続の見通しは個別の事情で異なります。広告掲載は相談・契約・再生計画の認可その他の結果を保証するものではありません。
相談時に聞かれることや持参資料の整理は、債務整理の相談では何を聞かれる?準備する資料と当日の流れを解説も参考にしてください。
個人再生と退職金に関するよくある質問
退職予定がなくても退職金見込額証明書は必要ですか?
必要になることがあります。裁判所の公開書式には、在職中の退職金請求権について、見込額を明らかにする書類の提出を案内する例があります。
ただし、必要書類は申立先の裁判所、勤務先の退職金制度、勤続年数などで異なるため、全国共通とはいえません。
個人再生では退職金見込額の8分の1を計上しますか?
千葉地方裁判所の公開書式には、在職中の退職金見込額について8分の1相当額を記載する案内があります。また、退職後に退職金をまだ受領していない場合には、4分の1相当額とする記載もあります。
ただし、これは同裁判所の公開書式上の取扱いです。申立先が異なれば提出書類や評価方法が同じとは限らないため、全国一律の基準として扱うことは避けてください。
退職金があると個人再生はできませんか?
退職金があることだけで、個人再生を利用できないとはいえません。財産の評価額は返済額の検討要素になりますが、個人再生では債務総額、収入の継続性、他の財産、家計収支、再生計画を履行できる見込みなどを総合的に確認します。
まとめ:退職予定がなくても、制度の有無と資料を早めに確認する
個人再生では、退職金に関する権利や受領済みの退職金が清算価値に関係する場合があります。退職予定がない在職中でも、退職金制度の有無や見込額を確認する書類を求められることがあるため、制度を確認せずに「関係ない」と判断しないことが重要です。
一方で、退職金が必ず全額加算されるわけではなく、見込額の一定割合が全国共通で用いられるわけでもありません。退職済み・退職予定・在職中の状況を整理し、申立先の裁判所の案内と専門家の助言に基づいて、必要書類と返済計画を確認しましょう。
参考にした公的機関・公式情報
- 大阪地方裁判所 倒産部(第6民事部)|個人再生手続についてのQ&A
- 千葉地方裁判所|小規模個人再生手続開始申立書(公開書式)
- 千葉地方裁判所|給与所得者等再生手続開始申立書(公開書式)
- e-Gov法令検索|民事再生法
- 法テラス|無料法律相談・弁護士等費用の立替
確認日:2026年8月20日。個人再生における退職金の評価、必要書類、返済計画は、申立先の裁判所や個別事情によって異なります。公開前には最新の裁判所書式・法令・相談先の条件を確認し、具体的な申立ては弁護士等の専門家へ相談してください。

